令和3年 労基 第3問・賃金の支払いなど 解答解説

労基

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R3 問3 労働契約と有給

労働基準法に定める賃金等に関する次の記述のうち、正しいものはいくつあるか。

ア 使用者は、退職手当の支払については、現金の保管、持ち運び等に伴う危険を回避するため、労働者の同意を得なくても、当該労働者の預金又は貯金への振込みによることができるほか、銀行その他の金融機関が支払保証をした小切手を当該労働者に交付することによることができる。

イ 賃金を通貨以外のもので支払うことができる旨の労働協約の定めがある場合には、当該労働協約の適用を受けない労働者を含め当該事業場のすべての労働者について、賃金を通貨以外のもので支払うことができる。

ウ 使用者が労働者に対して有する債権をもって労働者の賃金債権と相殺することに、労働者がその自由な意思に基づき同意した場合においては、「右同意が労働者の自由な意思に基づいてされたものであると認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するときは、右同意を得てした相殺は右規定〔労働基準法第 24 条第 1 項のいわゆる賃金全額払の原則〕に違反するものとはいえないものと解するのが相当である」が、「右同意が労働者の自由な意思に基づくものであるとの認定判断は、厳格かつ慎重に行われなければならない」とするのが、最高裁判所の判例である。

エ 労働基準法第 24 条第 1 項の禁止するところではないと解するのが相当と解される「許さるべき相殺は、過払のあつた時期と賃金の清算調整の実を失わない程度に合理的に接着した時期においてされ、また、あらかじめ労働者にそのことが予告されるとか、その額が多額にわたらないとか、要は労働者の経済生活の安定をおびやかすおそれのない場合でなければならない」とするのが、最高裁判所の判例である。

オ 労働基準法第 25 条により労働者が非常時払を請求しうる事由には、「労働者の収入によつて生計を維持する者」の出産、疾病、災害も含まれるが、「労働者の収入によつて生計を維持する者」とは、労働者が扶養の義務を負っている親族のみに限らず、労働者の収入で生計を営む者であれば、親族でなく同居人であっても差し支えない。

C 3つ正しい(ウ・エ・オ)

一肢ごとの詳しい解説

ア 使用者は、退職手当の支払については、現金の保管、持ち運び等に伴う危険を回避するため、労働者の同意を得なくても、当該労働者の預金又は貯金への振込みによることができるほか、銀行その他の金融機関が支払保証をした小切手を当該労働者に交付することによることができる。 ×

労働者の同意は必要です。退職金は金額が大きい可能性が高いので、小切手で払ったりできますが、同意は必要です。っていうか、小切手って換金不便ですので振込がベストですよね。たまに謎に小切手執着した支払いをしたがる経理などいますが、何とかならんもんでしょうかね。

イ 賃金を通貨以外のもので支払うことができる旨の労働協約の定めがある場合には、当該労働協約の適用を受けない労働者を含め当該事業場のすべての労働者について、賃金を通貨以外のもので支払うことができる。 ×

労働協約は通貨以外とセット、試験勉強的にそう覚えますよね。労使協定であれば全労働者対象に強制力を持たせることが出来ますが、それとの錯誤を誘発させようとする問題であり、労働協約の一般的拘束力もなんとなくイメージしちゃいがちですが、そこは論点ではないので×です。 労働協約の定めがある場合には、とだけなので、協約適用が4分の3以上とかじゃないとすべての労働者には及ばない。

ウ 使用者が労働者に対して有する債権をもって労働者の賃金債権と相殺することに、労働者がその自由な意思に基づき同意した場合においては、「右同意が労働者の自由な意思に基づいてされたものであると認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するときは、右同意を得てした相殺は右規定〔労働基準法第 24 条第 1 項のいわゆる賃金全額払の原則〕に違反するものとはいえないものと解するのが相当である」が、「右同意が労働者の自由な意思に基づくものであるとの認定判断は、厳格かつ慎重に行われなければならない」とするのが、最高裁判所の判例である。 ○

自由な意思での同意について、は当たり前として、その判断を厳格かつ慎重に行う、という所まで含めての正解肢です。

エ 労働基準法第 24 条第 1 項の禁止するところではないと解するのが相当と解される「許さるべき相殺は、過払のあつた時期と賃金の清算調整の実を失わない程度に合理的に接着した時期においてされ、また、あらかじめ労働者にそのことが予告されるとか、その額が多額にわたらないとか、要は労働者の経済生活の安定をおびやかすおそれのない場合でなければならない」とするのが、最高裁判所の判例である。 ○

当たり前みたいな文言が並んでしますが、賃金の清算調整の実を失わない・合理的に接着した時期・経済生活の安定をおびやかさない、などなど覚えておかなければいけないキーワードがたくさんあります。

オ 労働基準法第 25 条により労働者が非常時払を請求しうる事由には、「労働者の収入によつて生計を維持する者」の出産、疾病、災害も含まれるが、「労働者の収入によつて生計を維持する者」とは、労働者が扶養の義務を負っている親族のみに限らず、労働者の収入で生計を営む者であれば、親族でなく同居人であっても差し支えない。

労働者の同居の親族でなくとも、同居人(居候?)という表現が使われているのがミソ。なんとなく対象にならなそうな感じを持たせていますが、非常時払いの対象になります。届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある場合を含む、とか、よく厚年とか国年とか健保で出てくるワードですが、実際のところ認定のハードルが高い時があったりしますが、労基における非常時払いは事実婚認定されないような、同棲している恋人の入院などでも非常時払いを請求できるってことです。

ちなみに非常時払いは既往の労働分のみのは間違いなくもらう事が出来るので、日割りでの基本給・平均賃金分は請求できます。1か月分すべてを先払いで貰えるわけではないので、勘違いしないように。経理が面倒くさがる会社では、「前借は有無を言わさず認めない!」 というところもあったりしますが、何度も言いますが、既往の労働分・請求した日まで(または前日まで)の分はもらえる権利があるので、法律というものを教えてあげましょう。聞き分け悪ければ労基に電話一本入れましょう。

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